うつや退職者の元凶!パワハラ・クラッシャー上司で萎縮するHSP|ある男性の体験談

対人トラブル研究所
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今回は、私(ことね)の知人男性であるY君から聞いた、「クラッシャー上司」との日々について紹介します。現在、職場にクラッシャー上司がいて困っている方、日々攻撃を受けている方の参考になれば幸いです。

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クラッシャー上司とは

Amazonの内容紹介によると、ある大手企業に招かれた精神科産業医が、その会社の常務から「部下を5人潰して役員になった」という趣旨の発言を聞いたエピソードが紹介されています。このように、部下を精神的に追い詰めながら出世していく人物のことを、精神科医の牛島定信氏と、その教え子である筑波大学教授の松崎一葉氏が「クラッシャー上司」と名付けました。

2017年に出版された松崎さんの著書『クラッシャー上司 平気で部下を追い詰める人たち』は、大きな話題を呼びました。パワハラ上司と似た意味を持つ言葉ですが、クラッシャー上司はその特徴をさらに深掘りした概念です。多くの人がその存在を感じていながら、うまく言葉にできなかった人物像を、松崎さんが明確に定義したと言えるでしょう。

クラッシャー上司の背景にある心理については、[自己愛性パーソナリティ障害の社長・上司に支配されないための特徴と対処法]もあわせてご覧ください。

なぜクラッシャー上司は厄介なのか

クラッシャー上司は、部下を精神的に病ませてしまいます。会社にとっては人材育成の妨げになる存在であり、本来であれば排除されてもおかしくありません。それでも組織に残り続けてしまうのは、彼らが「仕事ができる」からです。

もし成果を上げられなければ、すぐにリストラの対象になるはずです。しかしクラッシャー上司は、成果を上げる術に長けているため、会社側からすれば「問題はあるけれど、クビにしづらい人材」という扱いになりがちです。彼らは「仕事ができなければ自分の存在価値がない」と考えているため、命がけで働き、複数の能力を兼ね備えた優秀な人物であることも少なくありません。

クラッシャー上司の特徴

仕事ができること以外にも、クラッシャー上司には共通する特徴があります。

  • エネルギッシュでバリバリ仕事をする
  • 高圧的で傲慢
  • 「自分の正義が絶対である」という信念を持つ
  • プライドが高い
  • 「ありがとう」「ごめんなさい」を口にするのが苦手
  • ディベート能力が高く、場を制圧するのが得意
  • 負けず嫌いで競争を好む
  • 敵視した相手をとことん攻撃する
  • 欠点を指摘されると激怒する
  • 共感能力が低い
  • 自省・内省の習慣が乏しい
  • 他責的で、気分にムラがある
  • 他者へ何かと要求する

これだけの特徴が並ぶと、「仕事はできても、人間的には多大な問題を抱えている」というのがクラッシャー上司の実態だとわかります。

【体験談】クラッシャー上司の元で働いたY君の話

ここからは、Y君自身がクラッシャー上司のもとで働いていたときの体験です。

Y君が二十代の頃、勤めていた小規模な出版系の会社に、クラッシャー上司がいました。第一印象は、「声が大きくクセが強そう」「実際の自分より大きく見せようとしている」「何かに怯えているのを隠そうとしている」というものだったそうです。50代手前でしたが、実年齢より若く、活力にあふれた男性だったといいます。

クラッシャー上司に潰された同僚

Y君が入社した頃、クラッシャー上司の下には、小柄で真面目な女性の部下がいました。彼女の様子は、日に日に変わっていったといいます。笑顔が消え、表情がなくなり、誰が見ても「病んでいる」とわかる状態になっていったそうです。

クラッシャー上司は彼女に対して感情的な物言いを繰り返し、「お前のためを思って言ってるんだぞ」という言葉を口にしていたといいます。ある日から彼女は出勤しなくなり、後になって、うつ状態になり出社できなくなったのだとY君は知ったそうです。それでもクラッシャー上司は悪びれる様子もなく、「最近の若い者は少し鍛えるだけですぐ壊れる」とこぼしていたと言います。まだ経験の浅かったY君も、さすがに「この人は危険だ」と気づいたそうです。

クラッシャー上司に取り込まれかけた日々

社内で浮いた存在だったクラッシャー上司にとって、社交性があまりなく会社になじめていなかったY君は、「声をかけやすい相手」だったのかもしれません。ある日、仕事終わりに飲みに誘われ、押しの強さに断ることができなかったといいます。

そこから、ほぼ毎晩のように飲みに付き合う日々が始まりました。クラッシャー上司が語る「仕事の心得」には学びになる部分もあり、次第に距離が縮まっていったそうです。今振り返ると、そのスタンス自体が良くなかったのだとY君は話していました。

クラッシャー上司はバイタリティにあふれ、ほとんど眠らずに働けることを自慢にしており、Y君にも同じことを求めるようになったといいます。朝方まで飲んで数時間だけ眠り、そのまま出社する日々が続き、次第に体調を崩し、仕事にも支障が出るようになりました。

睡眠不足の頭で、クラッシャー上司から「この会社は自分以外は無能だから、他の意見は聞かなくていい」と言われ続けるうちに、「確かにそうかもしれない」と思いかけたこともあったそうです。今思えば、これは一種の心理的な巻き込まれ状態だったのだろう、とY君は振り返っています。

信頼できる別の上司への相談

ある日、別の上司に呼ばれ、勤務態度について指摘を受ける機会がありました。その上司は、クラッシャー上司とは対照的に、厳しさと優しさを兼ね備えた、周囲から信頼されている人物だったといいます。

Y君は思い切って本音を打ち明けました。「もうあの人と距離を置きたい」と。その上司は、「彼は確かに強引で部下を追い詰めるところがあるが、成果を出しているのも事実だ」と、申し訳なさそうに答えたうえで、「潰れてしまう前に、辞めることも考えた方がいいかもしれない」と伝えてくれたそうです。過去に、同じように潰されていった若手を何人も見てきたからこその言葉だったのでしょう。

Y君はその場で結論を出さず、数週間かけて考えた末、退職を決意しました。

退職とその後

退職を伝えると、クラッシャー上司からは「根性なし」「見損なった」「裏切り者」といった言葉を浴びせられたといいます。ある程度予想していたため、大きなショックは受けなかったそうです。

クラッシャー上司が使いがちな攻撃的な言葉のパターンについては、[人が離れていくヤバい口癖26選]も参考になります。

退職後、Y君よりあとに入社してきた、真面目で気弱そうな後輩から連絡が来たことがあったといいます。「クラッシャー上司のターゲットにされて、潰れそうだ」という相談でした。かつての自分と重なる姿を見て、Y君は「精神的に限界を感じたら、すぐに辞めた方がいい」「場合によっては、無理に引き継ぎをせず離れることも選択肢の一つだ」と伝えたそうです。そのうえで、あえて一緒にクラッシャー上司の愚痴を言い合う時間を作ったといいます。「目の前の人が、それで元気を取り戻せるなら」というのがY君のスタンスでした。感情を吐き出したことで、後輩は少しずつ元気を取り戻し、数ヶ月後には退職。久しぶりに再会したときには、別人のように晴れやかな表情になっていたそうです。

クラッシャー上司への対応策

Y君の経験や、一般的に言われている対応策をまとめると、次のようなものが挙げられます。

  • 距離を取る
  • 上辺だけの会話に終始する
  • 反論はせず、表面的な同意にとどめる
  • 社内で信頼できる人に相談する
  • 社外の人に相談する
  • クラッシャー上司のいない環境へ転職する

「勇気を出して反論する」という選択肢は、あまりおすすめできません。クラッシャー上司は、自分の価値観こそが正しいと強く思い込んでいる傾向があり、非を認めることを、自分自身の崩壊と同じように感じてしまう可能性があります。そのため、反省や謝罪を期待するのは難しいと考えておいた方がよいでしょう。

クラッシャー上司と精神的な距離を取る考え方

クラッシャー上司から受けた理不尽な言葉は、その場を離れたあとも、じわじわと尾を引くことがあります。Y君自身も、抑え込んだ怒りが、帰宅後にふつふつと湧いてくる経験をしたそうです。

そんなとき役立つ考え方の一つが、「クラッシャー上司を、ある意味で下に見る」という視点です。彼らは、大人の力と立場を持ちながら、中身は幼く未成熟な部分を抱えている、と説明されることがあります。

クラッシャー上司になる人の多くは、十分な愛情や承認を受けてこなかった背景を抱えている可能性がある、と指摘されることがあります。愛された経験のある人は、余裕を持って他者に接することができますが、その余裕を持てないまま、実年齢に見合うだけの精神的な成熟を遂げられていないのかもしれません。それでいてプライドが高いために、自分の弱さを開示できず、その苦しさがまた本人を追い詰めてしまう、という悪循環が起きている可能性があります。

彼らの理不尽さに傷つけられないための一つの視点として、「気の毒な人が、今日も暴れている」というくらいの距離感で捉えることも、有効な自衛策になり得ます。

クラッシャー上司のその後

有能でパワフルなクラッシャー上司も、いつまでも元気に活躍し続けるとは限りません。

松崎一葉さんと河合薫さんの対談記事では、部下を追い詰めながら成果を出し続けていたある管理職が、家庭では家族に去られるほどの振る舞いをしていたにもかかわらず、家族が去ったことをきっかけにうつ状態に陥ってしまった事例が紹介されています。本人は「部下に厳しくしたのは、良かれと思ってのことだった」と話していたといいます。

また、別の事例として、それまで日本的な「あうんの呼吸」を通じて部下を精神的に追い詰めてきた管理職が、海外からの帰国子女である部下には、その手法が全く通用せず、かえって自分自身が業務を抱え込んでオーバーワークとなり、メンタルを崩してしまったケースも紹介されています。人を大切にしてこなかった結果が、巡り巡って自分自身に返ってくる。そうした構造が見て取れるエピソードです。

クラッシャー上司化してしまう根っこにあるもの

Y君はこう振り返っています。「クラッシャー上司の第一印象は、虚勢を張って自分を大きく見せようとしている、怯えた人、というものだった。今思えば、それは的外れではなかったと思う」。

そしてY君自身も、十代から二十代前半にかけて、後輩に自分の価値観を押し付けて、辛い思いをさせてしまった経験があると話していました。クラッシャー上司化してしまう要素の一つには、「自分だけは許される」という甘えや傲慢さがあるのかもしれない、とY君は日々の戒めにしているそうです。

世界からクラッシャー上司が一人でも減っていくこと、そしてこうした振る舞いが必要とされない環境が広がっていくことを、私も願っています。

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